successIPO (IPO準備会社を応援するブログ)

IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

主幹事証券の選定に関するアドバイス

先日、コメントとして、「証券会社の特徴」という話題リクエストを頂きました。

主幹事証券会社を選定する際のアドバイス(ヒント)程度ですが、まとめてみたいと思います。


最近は、複数の証券会社さんの中から主幹事証券会社さんを選定することが行われています(ビューティーコンテストなどと呼ばれます)。
その際の企業側の比較・判断材料としては、以下のような項目があります。

項 説 明備 考
上場市場に関する提案内容マザーズ、ジャスダック、東証本則などどの市場に上場するかなぜその市場を推奨するのかの理由まで聞いたほうがよいと思います。
上場時期に関する提案内容基準決算期(直前期)をいつに設定するか早い時期を提案してくれるところが良いように思えますが、全てが上手くいった場合のみ実現する「超ベストシナリオ(かなりの無理をしなければいけない)」の場合などもあります。
資本政策に関する提案内容オーナーの創業者利潤確保やファンド持ち分のEXIT計画など(関係会社の整理など含む)株主構成が複雑なケースなどは、この部分での提案内容に優劣が出るケースもあろうかと思います。
場合によっては、IPO時の想定の企業価値(時価総額など)が提示されることもあります。
IPOに向けての問題点・検討事項に関する提案内容IPOに向けての課題の整理、スケジュール案について自社の実情(問題点)をどこまで把握した上での提案なのかは重要です。
証券会社のIPO業務に関する実績過去のIPO社数や自社の属する業界に関するIPO実績など実績があるほうが当然に安心感があります。が、実績が少ないからこそ熱心に対応してくれるということもあるようです(ただし、いくら熱意があってもノウハウがなければダメですが・・・)。
証券会社の社内体制、担当者に関する事項 (会社として及び担当者個人の)自社の業界に関する理解や熱意、書類作成等の実務面でのサポート体制組織としての姿勢も重要ですが、2〜3年程度の期間はかなり濃いお付き合いになりますので「担当者」とウマが合いそうかどうかは重要な要素かと思います。
営業部門だけでなく公開引受部門の支援体制も示されるケースが多いようです。
上場までのコスト(コンサルティング費用・IPO時の引受手数料率) コンサルティング費用、引受手数料ともに各社内でも一律(どの会社でも固定金額)ではなく、ケースバイケースでの設定がなされることが多いようです。この部分の大小だけで判断することは避けるべきでしょう(いくら安くても実現に至らなければ何の意味もありません)。

もし、複数社の中から選ぶ場合には、上記のような要素を総合的に検討して決定することとなると思います。
決定権を持つのは、通常は社長や取締役会ですが、株主(VCなど)やメインバンクの意向が影響することもあります。

上記のような視点とは別に、ぜひ気をつけていただきたいのは、「中途半端な噂」の類です。
・A証券はXXXだからダメ
・B証券はXXXだからおすすめ

のような話題が聞こえてくることがありますが、ほとんどの場合、その証券会社全体についてを的確に評価しているようなものではなく、過去のたった一つの事例での話に尾ひれがついたものばかりのように思えます。
また、程度の違いはあるかもしれませんが、どの証券会社さんも、担当者の個人差というものが存在します。
・C証券は、XXXに厳しい
・D証券は、XXXは判断が甘い
のような噂話についても、その時の担当者の個別事例である可能性が高いと思ったほうがよいと思います。
面白いとか覚えやすい事例があったりすると、それが伝搬して大方の評価のようになってしまっていることもあるようですが、この手の話に振り回されるのはよろしくないと思います。

ということで、主幹事証券会社選びは、「会社名」での選定も重要ですが、「誰に(どの部署の誰に)依頼するか」もとても重要です



最後に、ひとつだけ「中途半端な噂」の事例紹介です。
以前、関与先企業の経理部長を探していた際に、応募書類に、
「証券会社やVCなどの事情に精通しており、幅広い人脈があります」
との記載がある方がいました。
面接の際にその部分を聞いてみましたが、
「Eファンドが大株主の会社は、F証券を主幹事にすると両社は系列なので審査が思いっきり甘くなるんですよ(知らないんですか!?)」
と真顔で言っていました(ここで社名が出た会社さんのご事情を僅かながら存じ上げているつもりでしたが、明らかに不適当な説明でした。あと、幅広い人脈というのも大したものではありませんでした・・・・)。
この手の業界ネタのような話題については、わかっている人からすれば真贋が明白なものであっても、業界外の人にとっては物凄い新鮮に(素晴らしいものに)映るようです
上の事例での面接に同席した企業の方は、面接後に「あの人はIPO業界もよく分かっており、結構出来る人のようですね」のような好印象を抱いていました(もちろんその場で私がNG評価をつけましたが)。

主幹事証券会社は、IPOに向けての最も重要な関係者です。
相互の信頼関係が大切ですので、後悔がないよう選定されればと思います。


【参考過去記事】

各種関係者(証券会社)(08/04/27)

2009 IPOデータ(総括? - 各種分類別集計表) (10/01/03)