successIPO (IPO準備会社を応援するブログ)

IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

paperboy&co.上場体験談(ジャスダックHP)

2008年11月7日にジャスダック上場した株式会社paperboy&co.代表取締役CCO 家入氏、代表取締役社長 佐藤氏)の上場体験談がジャスダックのHPに掲載されています。

(メールマガジン「JASDAQ IPO WAVE」としても配信されています)

JASDAQ上場を達成した会社の体験談 株式会社paperboy&co.
http://www.jasdaq.co.jp/list/taiken/taiken3633.jsp

以下、一部のみ引用です(注:下線は私が付しました)。

これから上場を目指すみなさんへ(佐藤氏)
 上場準備と上場を経験してみて、私からいえることは、上場には「近道」や「正解」はないということです。実は、楽に考えていましたが、上場は全然楽ではありません。主幹事証券やまわりの関係者の指導にも一つ一つ耳を傾けないといけませんし、取引所や主幹事証券もその先にいる投資家の保護を前提とした考え方を持っています。上場さえすれば投資家が株式を買ってくれる、そんな時代はとっくに終わっています。これからは、新しい時代の「上場」の準備、「新しく投資家を迎えること」に対する心構え、考え方が必要です。そして、それらをクリアし、晴れて上場できても気持ちを緩めると、ステークホルダーに迷惑を掛けることになりかねません。会社の永続につなげるにためには、ちゃんとした上場準備が必要だと思います
 皆さんもたくさんの大変なことがあると思いますが、あきらめないで誠実にやっていってほしいと考えています。そして上場準備を進め上場を達成することで、企業だけでなく個人の成長につながると思っています。

これは、上場準備をしている(もしくはこれからする)会社さん向けの素晴らしいメッセージだと思います。

なお、詳細は体験談本文をお読み頂きたいところですが、2007年に、ジャスダックではない市場への上場(「?の部」が不要な市場)に向けて証券審査が開始したものの、社内体制整備が出来ていない状況だったために審査がストップし、上場時期が延期となり、その後の再チャレンジにあたって市場をジャスダックに変更したというようなちょっと恥ずかしいようなことまで語られています。
IPOプロジェクトリーダーの離脱(退職)や、プロジェクト体制の再編(人材の採用・プロジェクトメンバー増員)を経て、ストップした審査の失敗・反省を踏まえて、謙虚に再チャレンジしたとのことです。


あと、以下の記述については触れておきたいと思います。

上場申請書類は何とか1か月で作成しました。上場時期のリミットを2008年中としていたので、年末までに上場したいという強い気持ちがあったこと、それまでの主幹事証券とのやり取りの資料を上場申請書類に転用できたことなどで、1か月で完成させることができました。提出物に対する社内での二重三重のチェック体制などが功を奏したのだと思います。。

ここでいう、「上場申請書類」は、文脈からは、いわゆる「?の部(ジャスダック版)」を指しています。
が、一般論として「?の部」は1ヶ月でできるものではありません(ここだけは誤解しないで頂きたいと思います)。
「?の部」の作成に要する時間は、その会社の事業規模・業種・業態などによってケースバイケースであり一概には語れませんが、同社が1ヶ月で出来たいうのは、「強い気持ちがあった」というようにかなり頑張ったこともあるのでしょうが、その前にすでに(NGとなったものの)証券審査を受けていたことが極めて大きいと考えます。
(「?の部」がない新興市場であっても、それに近いような資料作成が求められたり、質問書・回答書のやりとりで同じようなことが確認されるケースがありますので)


私も現在、複数の担当会社(コンサル先)で「?の部」作成に関与しておりますが、とてもとても1ヶ月では仕上がりません。「?の部」や「?の部」を作成しはじめると、現状をありのままに記載・説明すればよいというものばかりではなく、業務の中身など(場合によっては決算内容まで)改善・修正が必要なことが明らかになってくること(上場審査で改善を求められそうな事項の顕在化)も良くあります。そのため、私は、上場準備における「?の部」、「?の部」の作成は、会社が上場企業になるに向けての経営管理体制の改善プロセスの一部でもあると考えています。
上場準備や申請書類作成は、とても大変な作業ですが、課題をひとつひとつ愚直に解決していくことが、paperboy&co.佐藤氏が言われている『上場には「近道」や「正解」はない』、『関係者の指導にも一つ一つ耳を傾けないといけません』、『企業だけでなく個人の成長につながる』ということなのではないかと思います。




上場準備中の会社の方には、 他社分も含めて体験談を一読されることをオススメいたします。
ジャスダック以外の市場が想定市場の会社さんでも)
ジャスダック証券取引所は、精力的に上場体験談を公開・更新されておりとても良い取組みだと思います。
(その他の取引所はこのような取組みはほぼ皆無でしょうか。ヘラクレスが頻度は少ないですがメールマガジンで体験談を配信している程度かと思います。)

ジャスダック証券取引所 「上場を達成した会社の体験談」
http://www.jasdaq.co.jp/list/list_40.jsp