successIPO (IPO準備会社を応援するブログ)

IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

「IPO活性化・制度緩和」に思うこと (変な緩和策なら反対です)

この最近、IPO社数も増加基調にあり、また、株式市況も好調とIPO業界にとって喜ばしい状況にあります。

さらに政府主導で「上場促進へ制度緩和」というニュースが出たりしています。
政府、上場促進へ規制緩和検討 最低株主数を引き下げ(2/13 日経新聞
以下、記事より引用です。

現在はIPO前の1年以内に割当増資に応じた投資家は、IPO後の半年間は原則株式を売却できない。この期間を短縮できれば、IPO前の増資に応じる投資家が増える可能性がある。東証の新興市場でも300人以上と規定しているIPO時の最低株主数を下げれば、少数株主の企業でもIPOが可能になる。
発行済み株式数の5%超の株を保有する投資家は持ち株に1%以上の変動が発生した場合、大量保有報告書を提出する必要がある。投資家などの負担が重いため、政府は投資家に報告書の提出義務が生じる範囲を狭めることを検討する。上場企業の四半期ごとの業績開示についても、事務負担の軽減を目指す。

ただ、

このニュースを手放しに歓迎することはできないと思っています。
IPOが年間で19社とか、あまりに低迷している状況は困りますが、おかしな方向での活性化策であれば、やらないようがましかもしれません。

IPOの過去の歴史を思い出すと、
IPO審査緩和、制度緩和】IPO社数増加】【(粉飾など)不祥事発覚】IPO審査厳格化】IPO社数低迷】 → 【IPO審査緩和、制度緩和】 → ・・・
というサイクルを何度も繰り返してきています。

(過去記事)10年10月 IPOセミナー 【第1回】 1.(1)IPO社数の推移と各種の事件(11/01/05)

IPOの難易度が下がると出てくるのは、「IPOが目的(ゴール)」という企業のIPOです。
審査をすり抜けて上場を果たす(上場前株主はキャピタルゲイン実現)ものの、その後に不祥事が発覚し一般投資家に被害が出ます。
そのことによって、「ちゃんとした(真面目な)IPO企業」の株も投資家から敬遠されてしまい、IPO社数が低迷していきます。

今後検討される緩和策によって、インチキIPOが出てこないようにという点は十分配慮してもらいたいと願います。

上で紹介した日経新聞の報道でも、
・ロックアップの緩和
・最低株主数の引き下げ
などは、危ない感じがします。
IPOがゴールという企業(の経営者やIPO前に出資した投資家)」にとっては、これらの制度変更は大歓迎のはずです。ですが、「ちゃんとした(真面目な)IPO企業」にとっては、この制度変更が行われても「いいルール変更だ」とは感じないのではないでしょうか。
IPO前1年以内に増資に応じた投資家がIPO後半年間売却できないのは困る」とか、「IPO時に株主300人も集められない」という意見に耳を傾ける必要がどこまであるのかは疑問です。
現行制度においても小規模なIPOは、流通株式数が少ないため株価の変動が大きい傾向があります。
(いったん人気化すると一気に吹き上がります。そして人気が覚めると暴落です。それはマネーゲームであり、参加するのは投資家ではなく「投機家」です。)
もっと小規模なIPOもOKとなったら、いちばん喜ぶのは「IPOがゴールという企業(の経営者やIPO前に出資した投資家)」ということは想像がつきます。

「上場促進へ制度緩和」ということは賛成ですが、「健全な資本市場」のために、この部分は譲れない・この部分は緩和できる ということの見極めをしっかりして頂きたいと思います。

以下の記事もぜひお読みください。
ライブドア・ショック再来のリスクも…新規株式公開規制緩和への懸念と期待(Business Journal)


IPOコンサルタントのひとり言・・・)
現時点でもある程度はIPOのハードルは下がってきていますので、(健全性に配慮しつつ)さらに上場を促進するとしたら、私が考えるのは、
・J-SOXに関する緩和(IPO時の時価総額がいくら未満の場合とか、新興市場IPOなど条件を設定し、それを満たす企業は、J-SOX不要 or 任意適用 or 上場後数年間は猶予など)
IPOに関連する罰則強化(粉飾決算等で悪質なIPO不祥事を起こした場合には、とんでもない厳罰に処するとすることによる牽制、米国などとの比較で日本は緩すぎなのでは?)
だと思っています。


【参考過去記事】
政府が「成長戦略」にて新興企業の上場を緩和を検討(SankeiBiz)(13/01/12)

IPO活性化のための制度変更実施? (経済活性化のための緊急提言、日本再生加速プログラム)(12/12/02)

米国では、新興企業の資金調達に関する規制を大幅緩和(起業活性化法)(12/04/07)

JASDAQと大証一部・二部における上場審査基準等の整備(パブコメ)(12/03/28)

東証 本則市場IPOの活性化に向けた各種制度改正&審査プロセスの見直し(12/03/11)