successIPO (IPO準備会社を応援するブログ)

IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

ベンチャーIPO促進のために、JSOX3年猶予&財務諸表は2期分のみに?

昨日の日経記事です。

 内部統制報告書を3年猶予 金融庁、ベンチャー上場促進狙う(2013/10/15)

 

記事より引用です。

新規上場する際に提出する財務諸表を過去5年分から2年分に減らす方針。社内体制を明記する「内部統制報告書」も新規上場後3年間は出さなくてもいいようにする。新興企業の上場を後押し、経済活性化につなげる。

 有識者で構成する金融審議会(首相の諮問機関)を15日開き、基準緩和で大筋合意した。金融庁は2014年の通常国会に金融商品取引法の改正案を提出し、14年度中にも実施する方針だ

 

  例外として12年に上場した日本航空のように大企業は対象外にする。資本金100億円以上か負債総額が1000億円以上の企業は従来通り、上場直後から内部統制報告書の提出を求める。 金融審議会は企業が新規上場する際に提出が求められる財務諸表を過去5年分から2年分に縮めることでも大筋合意した。開示の簡素化を進め、上場しやすい環境を整える。

 

金融庁ウェブサイトに、金融審議会の資料が公表されています。

金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」(第6回)金融庁HP)

新規上場に伴う負担の軽減(事務局説明資料)によると、

  • 「特別情報」として開示していた直近2期分の前の3期間の財務諸表については、記載を求めない(自主的に開示することは妨げない)(資料P5)
  • 経営者による内部統制の有効性の評価や「内部統制報告書」の作成・開示を免除することは、必ずしも適当ではないのではないか(資料P9)
  • 新規上場後一定期間に限り「内部統制報告書」に係る公認会計士の監査を免除する(自主的に監査を受けることは妨げない)(資料P10)
  • 一定期間は、「3年間」(3回免除)としてはどうか(資料P11)
  • 新規上場企業であっても、大企業については、緩和の対象外とすることが適当ではないか その場合の基準としては、資本金100億円以上又は負債総額1,000億円以上という基準が考えられるのではないか(資料P13)

というような内容です。日経新聞の記事では、(経営者による)内部統制の評価もいらなくなるような文章ですが、そうではなく(監査法人による)内部統制監査を猶予するという施策のようです。

ただし、金融庁から公表されているのは、これらの審議資料だけであり、日経新聞の記事にあるように「大筋合意」かどうかはわかりません。

ですが、この報道が正しければ、IPO準備の実務にあたえる影響としては、「特別情報の財務諸表不要」、「内部統制猶予」のいずれについても結構なインパクトがあること間違いなしです。

この制度変更は、IPO活性化策として大賛成です。これまでも本BlogでもJSOXの見直し・緩和などの必要性を書いてきました。また、特別情報の財務諸表についても、「有価証券届出書」と「Ⅰの部」だけに記載する資料(目論見書には記載されない)ということで、「誰が特別情報の財務諸表を読んでいるんだ?」と常々疑問を感じていました。

14年中に実施されるということであれば、現在IPO準備中でこれらの作業に着手している会社にも影響大です。

本件、引き続き注目したいと思います。

 

なお、この審議会において、公認会計士協会からも意見が述べられています。

新規上場における内部統制報告書提出に係る負担の 一定期間の軽減に対する意見公認会計士協会)

今回の見直しには、「基本的には反対」とのスタンスとのことで、見直しを行う場合には証券審査の強化等の補完を望むとのことです(私も、この主張には異論はありません)。

仮にやむを得ず内部統制監査を一定期間免除する措置を講ずるとしても、投資者保護の観点から、証券会社の引受審査や証券取引所の上場審査を強化する等の補完措置が必要になると考える。