successIPO (IPO準備会社を応援するブログ)

IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

IPO時に、「社外取締役」は必要?、不要?

この最近、上場会社に「社外取締役」の選任を義務付けるべきではないかという議論が本格化しています。
IPO準備会社さんにとっても、本件はひとごとではありませんので、話題として取り上げたいと思います。

8月1日に、法制審議会(法相の諮問機関)の会社法制部会(部会長・岩原紳作東大教授)が開かれ、会社法改正の要綱案を最終決定しました。
法制審議会会社法制部会第24回会議(平成24年8月1日開催)法務省ウェブサイト)
改正要綱案のPDFが公表されていますが、会社法での「義務化」は見送りとなりました。

ただ、「附帯決議」として、以下が決議されたそうです。
「金融商品取引所の規則において、上場会社は取締役である独立役員を一人以上確保するよう努める旨の規律を設ける必要がある」

これを受けて、「義務化」を推進する立場をとる東証(斉藤社長)は以下の対応をしています。
会社法改正要綱案を受けた社長談話(8/1 東証HP)
独立した社外取締役の確保のお願い(8/2 東証HP)
「当取引所としては、要綱案の確定を待って、速やかに上場規則の見直しに向けた手続きを進めるとともに、上場会社に対しては、新たに導入される「監査監督委員会設置会社」への移行の検討を含め、独立した社外取締役の確保に努めるよう、この機会にあらためて強く要請することとした。」とのことです。

そこで、IPO準備会社はどうなるの?」ということですが、タイムリーに東証からアナウンスが出ています。
東証 上場推進部のプロモーション窓口「IPOセンター」が配信しているメールマガジン(No17、8/7号)にて、
「独立した社外取締役確保に係る新規上場時の取扱いについて」という、まさに本件がテーマとして説明されています。タイムリーにこの手の情報発信を行う東証の取組みは、素晴らしいと思います。
以下で一部をご紹介します(メールマガジンより引用)。

 なお、これら一連の取り組みにつきましては、新規上場を検討されている企業の皆様を対象としたものではなく、当取引所の上場審査においては、独立した社外取締役が一人以上確保されていなくとも、審査上不利な取扱いを受けることはありません

この取扱いについては、今後実施する上場規則の見直しとあわせて、「新規上場の手引き」及び「マザーズ上場の手引き」にも明記する予定でございます。今後、規則改正や手引きの記載内容の変更があった際は当メールマガジンでもご案内いたします。

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当然というか常識的な対応だと思います。
もともとの議論は、東証一部に属する大企業のガバナンスに対するものだったはずです。
それが、「上場企業全て」に「義務化」という話にまでなりかけてはいましたが、マザーズなどの新興市場においては、身の丈に応じたガバナンス体制・経営管理体制を求めるべきであり、「上場企業一律」で論じるべきではないと思います(個人的に、この「上場企業一律」論が大キライなのは、J-SOXのせいかもしれません)。
いまでも、新興市場に上場するベンチャー企業に、上場時には監査役会の設置(監査役3名以上)やJ-SOX対応が強制されており、コスト面でも事務面でも負担感が大きくなっている状態です。

先日も、支援先のベンチャー企業の経営者さんにも、「新興市場にIPOするタイミングにおいては社外取締役については、自ら必要性を感じたのであれば選任すればよいと思いますが、社外からの指導などでイヤイヤ選任する必要はないですよ。ただし、その後、東証一部上場企業になる頃には、会社の規模も変わっているでしょうし、社会的な責任も大きくなるのでその時には社外取締役の必要性を考える時が来ることも覚えておいてください。」というようなお話をしたところです。

ついでに、以下もご紹介しておきます。
上場企業のコーポレート・ガバナンス調査(2012)(8/1.日本取締役協会HP)
上場企業のコーポレート・ガバナンス調査(2012)(PDF)8/1.日本取締役協会HP)
こちらの資料を見ると、社外取締役選任企業の割合がどんどん高まっているのがわかります(2004年=30.2%、2012年=54.2%)。ただし、「東証一部上場企業」においてです。
せっかく統計データを公表するのでしたら、同じ内容の新興市場上場企業版が欲しい(知りたい)ところです(全然違う結果がでるのでは?)。。。。