「過年度遡及会計基準」をご存知でしょうか?
(正式名称は、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(企業会計基準第24号)」といいます)
3月決算の上場会社の場合、2012年3月期から適用されるホットな会計基準です。
会計方針(※)の変更を行った場合について、 これまでは以下の扱いでした。
(※ 会計方針の一例)
・売上の計上基準
・棚卸資産の評価方法
・減価償却の方法
・引当金の計上基準
【 これまで 】
前期の財務諸表 (2010年3月期) | 今期の財務諸表 (2011年3月期) |
旧(変更前)会計方針 | 新(変更後)会計方針 |
「過年度遡及会計基準」適用後は、以下になります。
【 これから 】
前期の財務諸表 (2011年3月期) | 今期の財務諸表 (2012年3月期) |
新(変更前)会計方針 | 新(変更後)会計方針 |
これまでは、過去の決算は「確定」したもので一切手出しできないものでしたが、これからは、会計方針の変更を行うと、変更した期だけでなく、前期分についても変更後の会計方針を用いて再作成(「修正再表示」といいます)することが求められます。
制度変更の経緯は単純で、「国際ルール」に合わせるためです(IFRSや米国会計基準は、従来から過年度遡及をする取扱い)。
この基準による「実務」への影響は、なかなかのモノ(影響大)です。
「上場会社」については、会計情報誌や監査法人のウェブサイトなどで詳細な解説記事が数多く出ていますし、2012年3月期有価証券報告書から適用ですので、実務面でのこの基準への対応はほぼ終わっている状況です。
それに比べて、「上場準備会社」へ与える影響については、あまり知られていません。
対象となる会社が上場会社よりも少なく、さらにその中で、上場前に会計方針の変更を行うケースというと対象会社が相当絞られますので実務でこのケースの検討が必要性な会社さん(と会計士)は、ほんの一握りと思われます。
ただ、その一握りの会社さんにとっては、「正確」にこの基準の扱いを理解しておかないとその後の実務(IPOスケジュールにも)に大きな影響が出てしまう可能性があります。
かなりマニアックな論点ですが、この論点の詳細解説は以下をご覧ください。
緊急解説 期3月期決算以降のIPO準備会社の財務諸表について(株式会社ラルクHP)
なお、上記リンク先の株式会社ラルクが、私が所属する上場コンサルティング会社です(初公表)。
これまで、本Blog「successIPO」は、匿名での情報発信をしてきましたが、今後は(本日より)株式会社ラルクのHPにおいても、「successIPO」の記事を配信するようにしました。
(方針変更の理由については、後日、改めて記事にします)
【参考過去記事】
「過年度遡及会計基準」に関する税務上の扱いが明らかに(国税庁)(11/10/30)