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IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

メビオファーム 上場時の増資を「中止」

TOKYO AIM第一号のメビオファームから、上場時の増資を中止するとのリリースが出ています。


新株式発行の中止に関するお知らせ
平成23 年6月10 日及び平成23 年6月29 日開催の当社取締役会において決議いたしました、当社株式のTOKYO AIM への上場に伴う新株式発行につきまして、平成23 年7月7日開催の当社取締役会において、新株式の発行を中止することを決議いたしましたので、お知らせいたします。
なお、上場日は従前の通り、平成23 年7月15 日を予定いたしております。
1.新株式発行の中止理由
 この度のブックビルディングの期間中、当社の製造に関する事業提携に関する基本合意が締結さ
、また発行価格の決定前日の平成23 年7月6日には中国の特定企業に対する当社の技術導出
(ライセンスアウト)に関わる契約が合意に
達するに至りました。
 これらの事象が発行価格の決定に与える影響を考慮し、当社の現状を適正に反映する形での価格
決定を行う必要があるものとの判断より、この度の新株式発行を中止することといたしました。
2.新株式発行を行わないTOKYO AIM への上場理由
 TOKYO AIM においては、株主数や流通株式数等のいわゆる上場形式基準に関する定めがないこと
から、当社は、既存株主に対する流動性の供与、事業上の信用力向上等を目指し、新株式発行を
行うことなく、機動的にTOKYO AIM への上場を行うことといたしました。
 なお、上場日は従前の通り、平成23 年7月15 日を予定いたしております。

これはかなり驚きです。
通常のIPOでは、「ファイナンスは中止するが上場は行う」ということはあり得ないことです(株主数や流通株式数等の形式基準があるので)。

理由は、事業提携基本合意や技術導出に関わる契約合意の価格影響に与える影響を考慮とありますが、この開示ではホントの理由が何なのかはよくわかりません。
ファイナンス期間中は、価格形成に影響をあたえるような契約締結や重要な意思決定などは控えるのが「通常のIPO」では常識中の常識です。TOKYO AIMでもさすがにそれは同じだと思います。

ブックビルティングを6月30日〜7月6日で行っていました(仮条件@1,200円〜1,600円)ので、その時の「投資家からの評価」とも関連しているものだと推察します。

今回の増資中止で、同社のIPOの主目的であった「資金調達」がなされないことになります。
同社は当面赤字が続くバイオVBですので、今後、別途の資金調達が必要となります。
(承認時の特定証券情報では、1,025百万円を調達し、研究開発資金として12/3期に855百万円、13/3期に170百万円を充当予定としていました)
特定証券情報」32ページ(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)では、「上場予定日(平成23年7月25日)から12ヶ月間の当社の運転資本は十分であることを確認しております。」との記載がありますが、11年3月末時点の現預金残高は185百万円です。。。。
追加で開示されている、訂正特定証券情報(平成23年6月28日)を見ると、「当社の製造に関する事業提携に関する基本合意」の相手先は、田中貴金属工業で、メビオファームが同社から契約一時金を受領するというようなことも書かれていますので、資金面では大丈夫なのかもしれませんが・・・

それでも上場を行うこととしたのは「既存株主に対する流動性の供与、事業上の信用力向上等を目指し」との理由説明のうち、「前者」が理由なのだろうと思います。
殆どのバイオVBは、VCから、EXIT(投資資金回収)に関する相当強いプレッシャーがかっており同社も例外ではないと思います。
今後の注目は、TOKYO AIMへの上場が、「既存株主に対する流動性の供与」となるのかどうかです。
一般投資家が参加できないプロ向け市場ですので、「そんなに高い流動性は期待できない」のではないかというのが私の個人的見解です(マザーズ等の新興市場の売買の中心は個人投資家ですので)。

上場後にどのような株価で売買されるのか、どれだけの出来高(売買高)があるのかに注目していようと思います(その時には、仮条件@1,200円〜1,600円を思い出しながら)。


【参考過去記事】
TOKYO AIM 第一号は、バイオVB「メビオファーム」(11/06/11)

メビオファーム TOKYO AIM 上場承認(11/06/26)