successIPO (IPO準備会社を応援するブログ)

IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

新「ジャスダック」はこんな市場です


先日も記事にしましたが 、新ジャスダックについて現段階で公表されている内容を整理してみました。

(10年3月5日、一部追記しました)


【 市場の全体像 】
10年10月を目途に以下のように統合される
・(新)JASDAQスタンダード ← (現)JASDAQ上場企業 + (現)ヘラクレススタンダード上場企業
・(新)JASDAQグロース  ←  (現)JASDAQ NEO上場企業 + (現)ヘラクレスグロース上場企業

ただし、上記は「原則」とのことで、「既上場会社からの事前申請があった場合には、原則によらず、大証による審査を経て、市場統合日までに移行する市場区分を決定する」(整備案 P3)


【 IPOについて 】
・JASDAQの「上場申請のための報告書(通称「?の部」)」、ヘラクレスの「確認資料」は廃止
・上記に代えて、「JASDAQ新規上場申請レポート(通称「JQレポート」)を申請書類として提出
 (ただし、施行日後1年間の経過措置あり) (整備案 P4、P5)
・JASDAQ NEOが行っていた申請前の「技術評価」は廃止
・上記に代えて、技術に関する評価は実質審査(← 申請後)において確認
・審査基準(主なもの)    

 

スタンダード

グロース

公募売出

1000単位または上場株数の10%の多い数以上

同左 

株主数

上場までに300人以上

 同左

浮動株時価総額

5億円以上

 同左

直前事業
年度末
の純資産

2億円以上

正(プラス)であること

利益等

直近事業年度の経常利益及び 税引前利益が1億円以上
(ただし時価総額が50億円以上であれば考慮せず)

問わない

実質基準

(企業の存続性)
事業活動の存続に支障を来す状況にないこと

企業統治及び内部管理体制)
企業規模に応じた企業統治及び内部管理体制

(企業の成長可能性)
・成長可能性を有していること
・持続的成長を達成できる合理的な見込みがあること
ただし、将来において持続的成長が見込まれる先行投資
型企業である場合は、経営計画において、概ね5年以内に当期純利益が計上できる合理的な見込みがあること

企業統治及び内部管理体制)
成長の段階に応じた企業統治及び内部管理体制成長段階にあることを考慮して、企業行動規範の 一部(監査役会・会計監査人の設置・内部統制システム決議等)につき、上場日から1年経過した日以後最初に終了する事業年度の末日から起算して3か月目の日から適用

 

【 上場管理・上場廃止基準(主なもの) 】

 

スタンダード

グロース

監視区分

問題を起こした会社などが入る
「監視区分」を新設

同左 

中期経営計画

なし

最低年1度、中期経営計画(3か年)の
策定・公表を義務化

・JASDAQ NEOのマイルストーン
開示は廃止(経過措置あり)
・現 ヘラクレスグロース上場企業にも適用

上場廃止基準
流動性

・浮動株式数:500単位未満
・株主数:150人未満
・浮動株時価総額:2.5憶円未満
・株価:10円未満

同左

上場廃止基準
(財務面)

4年間連続して営業利益及び
営業C/Fが負の場合において、
1カ年以内に営業利益又は営業C/Fが正とならない場合

債務超過が1年以内に解消しない場合

 


4年間連続して営業利益及び
営業C/Fが負の場合において、
1カ年以内に営業利益又は営業C/Fが正とならない場合

(上場後5年間は適用猶予)

・申請事業年度において営業利益の額が負であった企業が、上場後10年間において一度も営業黒字化しない場合

債務超過が1年以内に解消しない場合


 
【 コメント 】

・ヘラクレス「確認資料」、ジャスダック「?の部(通称)」が廃止、その代わりに「JQレポート」に。

・グロースの中期経営計画の開示は、NEOのマイルストーン開示を踏襲したものではあるものの、NEOでは四半期ごとの開示だったのが、年1回となります。

・スタンダードの場合、5年連続赤字だと退場(上場廃止)となってしまうため、バイオベンチャー等で赤字企業IPOの場合には時価総額50億円以上ということで「スタンダード市場」の形式基準を満たしたつぃても、「グロース市場」を志向することになるのではないかと思います(グロースは上場後10年まで赤字でも大丈夫ですので)。

・長期間の業績不振(営業利益と営業C/F)で、強制的にご退場(上場廃止)とすることは、市場の活性化・健全化という効用が期待されるもの、上場廃止回避のための強引な粉飾決算が行われたり(監査人も、駆け込み寺なところに変わったり)、変な勢力が介入するなどという懸念もあるように思えます。