successIPO (IPO準備会社を応援するブログ)

IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

エス・ディー・エス バイオテック 上場体験談(ジャスダックHP)

2008年12月8日にジャスダック上場した株式会社エス・ディー・エス バイオテック (取締役管理部長 高橋 順一氏)の上場体験談がジャスダックのHPに掲載されています。
(メールマガジン「JASDAQ IPO WAVE」としても配信されています)

JASDAQ上場を達成した会社の体験談 株式会社エス・ディー・エス バイオテック 取締役管理部長 高橋 順一 殿
http://www.jasdaq.co.jp/list/taiken/taiken4952.jsp


上場のプロセスを上手く説明されていますが、注目ポイントとしては、
>(3)上場作業中の難題
> 上記にご紹介いたしました諸作業の中でも特に苦労したのが、「過年度決算修正」
> と「反社会的勢力との関係排除体制の確立」でした。


「反社会的勢力・・・・」については、これまで何度も本ブログで触れてきましたので、「過年度決算修正」 についてコメントしたいと思います。
上場準備会社の方とお話しすると、監査法人監査を受けるのは2年間(直前々期・直前期)ということで、直前々期より後の期間だけを正しい(財務会計ベースの)財務諸表にすればよいとの認識をもたれているケースが多いです。
が、開示対象となるのは5年間(原則)で、「特別情報」という題目で直前々期よりも前の3期分も財務会計ベースの財務諸表を開示することとなります。
「監査法人の監査対象ではない」ということで、この「特別情報」の期間の財務諸表については監査法人はその立場上、多くを語らない(良いとも悪いとも)ケースが通常です。
確かに、監査証明の対象ではないため「どこまで正確な財務諸表でないといけないのか?」というところが実務上とても難しいところです(監査人は特別情報についてはコンフォートレターの対象にもしません。従来はあまり気にせずコンフォート対象に含められていたのですが・・・・・)。
エス・ディー・エス社の場合、『財務局』から決算修正を指示されたとのことで、「今、思い返せば、あの時点での(決算修正の)決断が少し遅れていたら、昨年中のIPOはなかったかもしれないと思います。」とのメッセージが事の重大さを示していると思います。
過年度決算修正をしたかどうかは一般投資家にはわかりませんので、実務において、どれ位の会社が上場にあたって過年度決算修正をしているかについて比率などを求めることなどはできませんが、相当数の会社が行っていることだと思われます(同社が特別なのではありません)。
「監査対象でもないのに、何で5年前の決算書を修正しなければいけないのか?」というのが、決算修正を求められた企業(経営者)としての通常の反応ともいえますが、不正確な財務諸表を開示して(しようとして)後々面倒なことが起こりかねないことを考えると、いろいろと柔軟(?)な対応が必要ということでしょうか。




上場準備中の会社の方には、 他社分も含めて体験談を一読されることをオススメいたします。
ジャスダック以外の市場が想定市場の会社さんでも)
ジャスダック証券取引所は、精力的に上場体験談を公開・更新されておりとても良い取組みだと思います。
(その他の取引所はこのような取組みはほぼ皆無でしょうか。ヘラクレスが頻度は少ないですがメールマガジンで体験談を配信している程度かと思います。)

ジャスダック証券取引所 「上場を達成した会社の体験談」
http://www.jasdaq.co.jp/list/list_40.jsp