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IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

会計士協会 上場会社の財務情報の信頼性向上のために・・・

公認会計士協会から、
「上場会社のコーポレート・ガバナンスとディスクロージャー制度のあり方に関する提言 −上場会社の財務情報の信頼性向上のために−」
が公表されています。

内容は、
?「上場会社のコーポレート・ガバナンスのあり方」に関する提言

?「上場会社のディスクロージャー制度のあり方」に関する提言
の2本立てになっています。

?では、会計監査人の選任・報酬決定について、監査役の関与をより高めるべきという提言です。
経営者が会計監査人を選ぶとか報酬額を決定するという状況では、利益相反問題がある(独立性を保った監査ができない懸念がある)という問題提起です。
この論点は今に始まったものではありませんし、理には適った提言だとは思うものの、
だとすると監査役制度の位置づけについても合わせて議論しないといけないのではないか?と強く思います。
経営者が会計監査人の選任・報酬決定をするのは問題で、それを監査役がやるなら問題ないというほど単純な話ではありません。そもそも監査役を選ぶのは経営者(法的には株主総会に諮りますが)です。
「会計監査人が提示した監査報酬の見積もりとその根拠を十分に吟味」できる監査役がどれだけいるのか?、「経営者に対して監査の効率性等に関する意見を求め、それをもって監査計画の妥当性を判断」できる監査役がどれだけいるのか?は、現行の監査役制度においては大きな疑問があります。
本提言においても、その旨の問題意識はあっさりとだけは触れられてはいるものの、恐らく「監査役制度のあり方」というテーマもかなりとてもデリケート(?)な領域なので、そちらにはあえてあまり踏み込むことなく、あえて「会計監査人」の部分だけを会計士業界側の主張としてまとめていますので、読んだ感想としては、若干自分勝手な提言にも読めました。


?については、上場会社は
・財務諸表(金商法、有価証券報告書により投資家等へ開示)
・計算書類(会社法、株主へ)
の両方を作成し、両方に対して別々に監査人が監査報告書を作成しているという点について、
両者を一体化できないか?、とか、有価証券報告書を株主総会前に開示したほうがよいのではないか?、監査も一本化できないか?、本当に単体財務諸表は必要なのか?などの提言がなされています。
実現は簡単ではないのかもしれませんが、今後予定されている国際会計基準の導入についても考えると、さすがに避けて通れない論点だと思わされる内容です。

この提言がどこまで発言力・影響力を持つものなのかはわかりませんが、
「提言したけどその後の議論もなくそれっきり」ということにはならないでもらいたいと思います。


私は別の話として、「決算短信(取引所ルール)と有価証券報告書(金商法)」というテーマについても何とかならないものかと思っています。
決算短信」自体は紙1枚ですが、その添付資料の肥大化(有報化?)には違和感を感じています。
段階的に簡素化を図ってきていると言われているものの、財務諸表部分には大量の注記情報が求められており、「J-SOX」・「決算発表早期化の要請」もあり企業の経理部門は悲鳴をあげている状況にあります。
「投資家のための情報提供」いう大義名分があるのかもしれませんが、「未監査(監査対象ではない)」という位置づけである決算短信の注記事項を本当に必要としている投資家がどれだけいるのだろうか?と常日頃思っています。