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IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

(参考書籍)こうすればできる!決算早期化の仕組みと実務

上場準備会社の経理部門にとって、『決算早期化』は大きな課題のひとつだと思います。
その対応に向けて、とても参考になる書籍が出ていましたので紹介します。

こうすればできる!決算早期化の仕組みと実務

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本書は、上場企業の決算早期化コンサルティングを数多く手がけた会計士の方が書かれた決算早期化のための実務書です。
多くの上場企業の決算を見比べると、「決算の遅い会社には共通点がある」として典型的な状況を説明しています。

以下に本書の目次の一部を抜粋します。


第2章 決算早期化を達成する経理の仕組み 
 3 アウトプット業務の現状
  (1) アウトプット資料が充実していない
   ?アウトプット資料が少ない
   ?アウトプット資料がだぶりがある
  (2) アウトプット資料が検証不能である
   ?会計監査の利用可能性が低い
   ?分析が不十分
   ?開示物とリンクしていない
  (3) アウトプット資料の検索に時間がかかる

第3章 決算早期化を達成できない原因と対策
 1 単体決算が遅い会社
  (1) 管理業務上の問題がある会社
  (2) 事前準備不足の場合
 2 連結決算が遅い会社
  (1) 子会社側に問題がある場合
  (2) 親会社側に問題がある場合
 3 開示業務が遅い会社
  (1) 基礎資料なしでの開示資料作成
  (2) 開示資料作成段階での基礎資料作成
  (3) 開示資料・基礎資料のチェック不能
 4 監査に時間がかかりすぎている会社
  (1) 監査の日程が長すぎる
  (2) 監査のタイミングが悪い
  (3) 決算早期化のための会計監査対策


このあたりの視点については、私も100%同感いたします。
決算早期化が課題となっている上場準備会社は、ここで書かれていることのいくつか(沢山?)の状況にあてはまっていると思います(決算が遅いのに、これのいずれにもあてはまらないという会社はまずないだろうと私も思います)。

本書では、経理のアウトプット資料を「リファレンスナンバー」と「リードシート」の活用などによって整備することが決算早期化への近道だとして、手順を説明しています。
この切り口は、著者の方が「会計監査に従事していた会計士」だからこそだと良くわかります。
(監査をする側の立場を経験したことがある方であれば本書を読まれるとこのコメントに同感頂けると思います)
決算早期化のために大切なことは資料のファイリングの仕方、資料の名称の見直し(電子データのファイル名含む)、決算の事前準備、監査法人とのコミュニケーションなど、経理業務における「基礎的な作法」をしっかりとすることだという内容です(本書で書かれている手法は、高度な経理・会計知識を必要とするようなものはひとつもありません)。
ひとつひとつの内容については、会計士の視点からすると「当たり前」ともいえることが多いのですが、実際にここで書かれたような対応・工夫ができていない会社がとても多いのも事実でしょうし、こういう切り口で書かれた書籍はこれまでにありませんでしたので、本書はとてもイイと思います。

決算早期化に取り組まれている会社であれば、ぜひとも本書を一読することをオススメいたします。
なお、本書で書かれている対応・工夫をしっかり実践できれば、監査人からの評価アップになることは確実だと思います。


あと、著者の方が書かれているこちらのブログもとても参考になりますので紹介しておきます(会計まわりのトピックス情報をまとめて下さっており私も愛読者です)。
■CFOのための最新情報■
http://blog.livedoor.jp/takeda_cfo/



かくいう私も、もはや数年前のことですが、上場企業の『連結決算早期化コンサルティング』を主たる業務としていた時期がありました。
難易度が高い決算早期化プロジェクトでしたので(連結子会社数が3ケタあるような会社の連結決算発表日程をまとまった日数早めるというのは並大抵のことではありません)、本書で書かれているような「基礎的な作法」だけで解決できるようなものではなく、PERT図を用いながら決算関連業務の各プロセスをぐりぐり分解し、「いったいどの業務がクリティカルパス(早期化を阻害している業務)なのか?」を特定した上で、どうやれば早期化が実現できるかを検討・改善していくようなことをやっていました(こういう決算早期化は経理・会計の専門性が必要になります)。
当時はまだ四半期開示などは制度化されていない時代だったのですが、昨今の会計事情(四半期開示、J-SOX対応など)からすると、今でも経理まわりの業務改善系のコンサルティングニーズは潜在需要としてはかなりあるんだろうなぁと思ったりしています。

【参考記事】
 IPO参考書籍(目次)