successIPO (IPO準備会社を応援するブログ)

IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

応援団とうまくコミュニケーションをとること

先日のエヌ・ピー・シーの隣社長の講演内容に絡めて、私の考えを書いてみたいと思います。

(第2回)●応援団とうまくコミュニケーションをとること

未上場の会社が上場を目指す場合、それまでは付き合うことが無かった各種関係者が登場します。
(証券取引所、証券会社、監査法人、ベンチャーキャピタル、専門印刷会社他)
多くの会社さんが、「わが社はこれら関係者とうまくコミュニケーションが取れている」と思っているようですが、実は会社の側が思っているほどうまくコミュニケーションが取れていないケースを良く見かけます。
証券会社や監査法人と揉めたとか・トラブルになったということも耳にしますが、多くの場合、もともとは細かいボタンの掛け違い・すれ違いから始まったコミュニケーションエラーの行き着く先が、決定的なトラブルとなっているようです。

隣社長は、「会社と応援団とは基本的に利害が一致している」と仰っており、確かに「基本的」には一致しています。
ですが、このコミュニケーションは、「1」対「多数」の関係にあることに十分注意が必要です。
会社にとっては、付き合う証券会社(主幹事)、監査法人、証券代行、専門印刷会社は、「1社だけ」ですが、相手にとっては、その会社は「多数の上場準備会社のうちの1社」ということです。
そういう意味では、対等の相思相愛関係ではないのです。
「その会社が上場会社になってもらいたい」という気持ちは持っているでしょうが、関係者(の担当者)からすると「複数社(例えば10社)のうちの1社」ですので、対応が悪いとか嘘・間違いを言うとか、約束を守らないというような会社がいた場合に、真剣にその会社の上場を応援する気になるでしょうか?
「その人達も仕事(ビジネス)なんだからちゃんとやってくれるだろう」という考えを持つ方も多いようですが、相手(担当者)はひとりひとりの人間です。当然に、ちゃんとした対応をする会社には熱心に対応するでしょうし、良くない対応をする会社には気持ちが乗らないでしょう。

上場の実現に向けては、これら関係者(応援団)の協力が不可欠です。
「関係者(応援団)が応援したくなる会社」でいられているかどうかを常に意識することをオススメいたします。
かなりしつこく書いてしまいましたが、この部分が上場成功に向けての「本質」ではないかとも思っています。

約半年前の記事ですが、以下の過去記事を紹介しておきます。
・過去記事:IPOに向けての各種関係者について(総論)(08/04/19)
・過去記事:各種関係者(証券会社)(08/04/27)
・過去記事:各種関係者(監査法人)(08/05/01)
・過去記事:各種関係者(証券代行)(08/05/20)
・過去記事:各種関係者(専門印刷会社)(08/06/01)



●社長自身が変態(成長)すること
あと、これについても 少しだけ触れたいと思います。

●隣社長 講演より
・会社をつぶすリスクは、「社内(社員、商品力・・・)」、「社外(市場、競争力、値下圧力・・・)」、「資金環境(金融機関・・・)」にあるのではない。 「社長自身の中」にある
・上場へのプロセスで社長自身が手と体を動かすこと
・つまり、主幹事証券会社、監査法人の指導を社長自らが愚直に受け入れること

ここで隣社長が伝えたかったことは、単に『今後、会社を良くするのも悪くするのも社長次第ですよ』ということではないかと思います。
どこの会社の社長でも、会社を継続させること(取引先との関係維持、従業員の雇用確保など)というとても重たい責務を背負って真剣勝負で会社経営に取り組まれています。
IPOを目指すのであれば、
IPOに向けての課題があれば、その課題に社長自身が正面から向き合うべき であり、
これまでのやり方、考え方から変化していかなければいけないこともある ということなのだと思います。

IPOに向けて管理面(例えば、予算統制や与信管理)で改善が求められた場合に
【社長】 これまでこのやり方でうまく行っていたんだからいいじゃないか、何でそんな面倒なことをしなければいけないんだ
というような議論(反論・衝突)が発生しがちです(変化に対する抵抗)。
ただし、このような状況となった場合も、
「その方法がこれまでもベストだったのでしょうか?」とか、「今よりも小規模企業だった当時はその方法が最適だったとしても、これから更に業容・企業規模が拡大していったときに、同じ方法でよいのでしょうか?」という議論を重ねると、多くの場合は、
「上場企業としてはどういうやり方がいいんだ?、説明してくれ」と、社長自身の意思・判断で変化を受け入れていくということが起こります。
ただし、稀に、この変化を許容できない社長もおられ、その場合、残念ながらその社長が会社の足を引っ張ってしまっているということもあるようです。