successIPO (IPO準備会社を応援するブログ)

IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

上場準備会社の採用ミスマッチを防ぐには

前回の「なぜ上場準備会社の人材は短期間で辞めるのか?」の続きです。


ミスマッチの最大の原因である「聞いていた話と実際が違った」を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。

それは、入社前に、
・相手(会社、応募者)の話をしっかりと聞くこと
・自分(会社、応募者)の話をしっかりとすること

に尽きると思います。


もう少し細かく考えると、
・会社(経営者)は、
  1. 実態以上に、「自社は良い会社だ」、「面白い仕事をさせる」という説明をしてしまう
  2. 伝えておかなければいけない会社の問題・課題を伝えることを避けてしまう

  3. 人材の能力・経験についての評価を誤ってしまう
・人材(応募者)は
  1. 実態以上に、「自分は能力・経験が高い」という説明をしてしまう
  2. 伝えておかなければいけない自分の問題・課題を伝えることを避けてしまう
  3. 会社についての評価を誤ってしまう

ということなのではないかと思います。

そして、これらのミスマッチを防ぐためには、
中途半端な理解の上での合意(採用・入社)は、会社と人材の双方にとってとても危険なことであることを強く認識する必要があると考えます。
会社(経営者)の側で考える場合、採用した人材が定着せず退職してしまうということ(=改めて採用活動を行うこと)は、とんでもない損失(時間・コスト)であることを認識する必要があります。
(経験者を中途で1名採用するだけでも「(複数の)人材紹介会社への要請」 → 「(複数の)応募者の書類選考」 → 「(複数の)応募者の面接(各人に複数回)」 → 「内定」 → 「入社手続」というプロセスで使われる人件費(時間)は相当なものです)


なお、上記の中で、私が、上場準備会社の人材採用において深刻な問題意識を持っているのは、
3. の人材の能力・経験についての評価を誤ってしまう です。

それは、
上場準備作業が専門分野であるがために、会社(経営者)が、「この人物は、○○長(管理部長、経理部長、経営企画室長、上場プロジェクト室長)を務める実力(能力・経験)があるのだろうか」を評価することがとても困難だからです。

多くの場合、会社(経営者)にとって上場準備は初めての経験です。
上場に向けては「何を」、「いつまでに」、「どのレベルまで」しなければいけないのかなど会社(経営者)も十分に理解できていないことが多いと思います。
そのような状況で、
私はこれまで、・・・・・・・・証券会社対応では・・・・・・・・監査法人対応においては・・・・・・・・・上場申請書類の作成についても・・・・・・・・・(専門用語を散りばめたもっともらしい説明)・・・・・・・のような経験をしてきており、私に任せてもらえれば御社の上場準備は全て対応できます」のような応募者が現れた場合、
(応募者が話していた内容は良くわからなかったが)そこまで言うなら任せてみるか」となってしまいがちなのではないかと思います。
このようなやり取りの中で合意した人材採用が、どのような顛末となるかは想像がつくと思います。
そのため、是非、応募者のアピールをそのまま受け止めることなく、「実例などで具体的な説明を求める」、「理解不足の人にもわかるような説明を求める」などによって、本当に任せてよい人物なのだろうかをなるべく吟味されることをオススメいたします。

それと、 1. 及び2. に関連して、これからは会社(経営者)の側からも従業員・応募者に対しても積極的に情報開示をしていくべきという点については、こちらの本(過去記事リンク)も参考になります。



【補足】
上記は、私のこれまでの経験から、こういうことが比較的多く見受けられるということの記載ですので、「当社は上場準備会社であるが、こんな採用はしていない」や「私は上場準備会社への就職活動にあたって、このような対応はしていない」のようなお叱りはご勘弁頂ければと思います。



【おまけ】
私は、仕事柄イヤと言うほどこのミスマッチを見てきているため、自らのクライアント(ご支援先企業さん)が、上場準備や経理に携わる人材の採用活動を行う場合には、(要請があった場合に限りますが)応募者の能力評価のお手伝いをさせて頂くこともあります(注:能力面での評価の「お手伝い」であり、人柄・コミュニケーション能力等の全般評価は当然にクライアントが行います)。
「上場コンサルタントってそんなことまでやるの?」のような感想を持たれる方もおられるかもしれませんが、「効果的・効率的な上場準備作業の実現によってクライアントの上場の成功を全力で支援する」というミッションを遂行するためには、有効な業務なのではないかと考えています。
(逆にいうと、企業(経営者)の不十分な能力評価によって、実力不足の人材を採用されてしまうと、その後の上場準備作業に悪影響が出てしまう(コンサルタントも苦労する)ため、採用時に関与させてもらうことが近道であるということです)