successIPO (IPO準備会社を応援するブログ)

IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

中期経営計画の策定

中期経営計画は、とっても大切です。

ベンチャー企業さんに、中期経営計画の状況をお聞きすると、以下のようなお答えを頂きます。

 ?中期経営計画はありません
 ?数年前に策定したことはあるが、それっきりです
 ?資金調達をしたときに求められて策定した中期経営計画があります
 ?毎年、中期経営計画を策定しています

?〜?の会社については、まず、上場に向けては、中期経営計画を毎期策定(更新)していく必要があります(ローリング方式といいます)。

ローリング方式でないとダメなのか?
たまに、「立派な上場企業でも、3年に1度しか策定していない会社もいっぱいあるじゃないか、だから我が社だって毎年なんかやらなくても3年に1度でもいいんだ」というお考えをお持ちの会社(経営者)さんもおられるのですが、残念ながらそれは合理性のある反論ではありません。
事業が軌道にのっている「立派な上場企業さん」と、「これから急成長して2年後・3年後には今の事業規模よりも見違えて成長するぞというベンチャー企業さん」では状況が全く違います。
前者は、上場企業としての十分な実績があり、その上で3年などの中期的視点での方向性についてそれなりに高い確度で分析・検討の上で中期経営計画として策定しているのです。これに対し後者の場合は、前者との比較においても、とても多くの不確定要素を抱えており、2期目・3期目の計画については一定の条件下でこうなっていくだろう(いきたい)というようなものかと思います。
ですので、「中期経営計画は、3年に1回策定すれば十分だ」というようなお考えをお持ちになりたい場合は、当面はローリング方式を採用し、上場をばっちり実現させた上で、事業が相当程度高いレベルで軌道に乗った暁に、数年ごとの中計策定に切り替えて頂くというのが順序だと思います。


毎年策定していれば、それでいいのでしょうか?
上記?の場合でも、 多くの場合は、上場審査で合格点をとれる中期経営計画にはなっていないのが実情です。

・数値計画(定量的検討)のみで、事業環境の分析や競合他社の動向など定性面の検討が行われていない。
・経営陣(社長)が、目標数値ありきで策定したトップダウン予算である。
・財務会計の勘定科目体系になっていない 。
・勘定科目単位で数値の算出方法が合理的に説明できない。
・単年度予算と中期経営計画の初年度分の金額が、食い違っている。
加えて、中期経営計画は初年度が開始される前までに策定を終えることが原則とされています(3月決算会社の場合には、3月末までに策定)。


中期経営計画の形式面の要件等は、次回以後で別途ご説明したいと思います。

これまでにちゃんとした中期経営計画を策定した経験のない会社さんにとっては、この中期経営計画策定作業は、会社全体を巻き込んだかなりの大仕事になります。


中期経営計画を策定することのメリット
大変な作業ですが、正しい進め方で行えれば、以下のような効果があるとても有意義な作業です。

〔経営陣にとって〕
・業界の動向ある程度客観的に見ることができる
・業界内における自社の位置づけや強み・弱みをある程度客観的に見ることができる
・自社の課題や方向性について、部署単位・部門単位で評価・検討できる
・従業員が会社全体や自部署・部門の方向性や課題について関心をもつようになる
・(結果として、社内全体のIPOに向けての志気が高まる)

〔従業員にとって〕
・会社が今後どういう方向に進んでいこうとしているのか(社長が会社をどうして行きたいのか)がわかる
・会社が抱えている課題とそれに対応するために取り組むべきことがわかる
・自分の所属している部署・部門について、社内における位置づけや課題がわかる
・自分の所属している部署・部門以外の部署・部門が何をやっているのか、やろうとしているのかがわかる


中期経営計画を、経理部門や経営企画部門だけで策定されている会社さんもあるようですが、見栄えとしては立派なものを用意することは出来ても、上記のメリットが十分に得られないので勿体ないなぁ(せっかく策定するのであれば良いものを策定すればよいのに)と思うことがよくあります。


中期経営計画の策定にあたっての留意点については、また次回以後にご説明していきたいと思います。