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successIPO (IPO準備会社を応援するブログ)

IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

IPO準備実務の要諦 (初代successIPO管理人からの卒業メッセージ)

初代successIPO管理人からの卒業メッセージです。

 

エラそうなことを述べるつもりはありませんが、管理人交代にあたり、私が、監査法人 →証券会社 → IPOコンサルティング会社と約15年にわたって「IPO準備」と関わってきた経験での気づき事項を皆様にお伝えしたいと思います。

  

  1. IPOはカンタンなことではないことを知る
  2. あなたがIPOのプロだと思っている関係者が、本当のプロではないかもしれないと知る
  3. IPOコンサル活用の是非について知る
  4. IPO準備は、愚直に、誠実に、諦めずに が王道

 

1.IPOはカンタンなことではないことを知る

この最近、IPO準備中の会社さんが急増しているようです。

アベノミクスのお蔭もあって、株式市況も最悪期を脱しており、また、金融庁証券取引所なども上場企業を増やすべく制度上及び運用上の活性化策を施してきています。

数年前には考えられなかった高い株価が付く事例や、比較的小さい規模の会社でも上場できた事例があるために、IPOを意識する会社が増えてきたことの証であり、それ自体は我が国の経済活性化のためにも喜ばしいことだと思っています。

その反面、IPO準備がうまく進められていない事例も増えているようです。理想的に進んだ場合の最短の上場スケジュールだけが独り歩きしてしまい、実際のIPOに向けての実務的な対応が遅れ遅れになってしまっているようです。一時期に比べるとハードルは下がったとはいうものの、上場会社になることがカンタンなわけはありません。四半期毎に監査法人がレビュー・監査をした決算を開示していくだけでも未上場企業にとっては一大事です。それ以外にもやる事が山積みですので「短期間でIPOを狙えますよ」と言われても冷静に受け止めることが肝要です。

約10年前のネットバブルの時を思い出します。当時もIPO準備会社が山ほどありましたが、IPOに漕ぎつけたのは一握りです。今の状況も当時に似ていると思います。

IPO環境がいくら良くなっても、母数も増えますので、結局は「一握り」の会社だけしかIPOの実現はできないと強く認識する必要があります。成長可能性が期待できるベンチャー企業に対しては、社外の関係者は、耳障りの悪い話はなかなかせず、「ぜひIPOをしましょう、課題は解決できますから」など、とても嬉しいことを言ってくれます。ですが、そう言われている会社(社長)は、ごまんといるのです。

 

 2.あなたがIPOのプロだと思っている関係者が、本当のプロではないかもしれないと知る

監査法人(の担当者)や主幹事証券会社(の担当者)が、IPOへの水先案内人となります。また、投資家(VCなど)やその他の専門家(税理士、弁護士、社労士等)もIPOに精通した人としてアドバイスをしてくれることがあるでしょう。

IPO準備企業としては、これら関係者と良い関係構築を行いながら、効果的・効率的に上場準備を進めていく必要があります。

その際にまず知っておくべきことは、「あなたの会社を対応しているこれら関係者は必ずしもIPOに精通しているとは限らない」ということです。

  • 監査法人会計のプロではありますが、IPO全般についてプロではありません。私も監査法人に勤務していた時には、ある程度はIPOに携わっている(得意な)グループにいましたが、今振り返ると、「ど素人」でした(ごめんなさい)。ショートレビューを何十回経験しても、基礎知識が固まるだけで、IPOの本質には近づけません監査法人に所属されている会計士さんの中にも IPOのことやベンチャー支援が本当に大好きで担当クライアントが何社も上場をしている実績がある人や、出向などによって証券会社や証券取引所IPOの指導や審査を自分で経験したことがある人など、広範なIPOテーマについてレベルの高い指導が出来る方も、一握りだけはいらっしゃいます。しかしながら、多くの会計士さんは、あくまで「会計」・「監査」・「開示」の実力はプロフェッショナルですが、それ以外のIPOのテーマは、基礎をしっかり押さえているものの上場審査での合格水準などはよくわならないというレベルだと思います。
    私も駆け出しのころ、監査業務(上場会社・上場準備会社)をやりつつ、ショートレビュー(IPOに向けての課題抽出)を数多く経験させてもらったため、比較的短い期間でやらなければいけない項目はスラスラともっともらしく語れるようにはなりました。ですが、「どのレベルまでやれば上場審査で合格なのでしょうか?」とか「本当にそのレベルまで強化しないと審査では不合格になってしまうのでしょうか?」のような質問をされるとメロメロで、「難しいご質問ですね。そこは一般論で考えてもよくないので、主幹事さんに聞いた方がよいですね。」というトークを多用して凌いでいました・・・・(懺悔)。
    ショートレビューの報告時に「上場審査で使う申請書類「Ⅱの部」(← 本則市場上場の場合に作成する書類)は、ボリュームも多く、作成するのがとても大変なんですよ」ということをエラそうに皆語っていましたが、実はその担当会計士さんは「Ⅱの部」の実物を一度も見たこともないというようなことが珍しくありませんでした。これは昔話ですが、私の知りうる限り、今も同じような状況のようです。数年前まではIPO氷河時代で大手監査法人でも1年間にIPOする企業は10社あるかないかという時代でしたので、胸を張れるほどIPO(実現)を経験したことがある若手会計士さんが(沢山)いるはずがないことは明らかですね。
  •  (主幹事)証券会社IPO準備全般を指導する中心的なプレーヤーですので、大手の証券会社にはそのためのノウハウが蓄積されています。ただし、担当者レベルで考えると、経験豊富な人とそうでない方とがいらっしゃいます。
    そもそも、証券会社はそれなりの頻度で人事異動がある組織です。IPO社数が少ない状況が続いていましたので(IPO関連部門の人数を大幅削減した証券会社さんなどもありました)ので、IPO準備の指導や審査のノウハウを持っている方ばかりとは限らないということです。
    証券会社の公開引受担当者・審査担当者は、IPO全般について指導・審査する立場にありますが、そのためには、投資銀行マンとしてのファイナンスのスキルに加え、会計・監査・会社法金商法・労働関連法令など、広範かつ高度なスキルが必要です。
    証券会社の業務内容は多岐に亘りますので、これらのスキルは、全ての証券マンに備わっているわけではありません。他部署から異動したばかりの不慣れな方が見よう見まねで指導にあたるということもあるようです。
    (なお、公開引受部門が関与する前段階の場合には、法人営業部門(企業金融・・・、事業法人・・・などの部署)の証券マンからIPO準備の指導・アドバイスを受けるケースもあります。これら営業部門の方は、IPOの指導や審査を本業としているわけでもありませんので、過度な期待をしてはよくないと思います。)
    証券会社の担当者さんが経験不足の場合でも、上司のレビュー等で組織的な対応はしてもらえているとは思います。とはいっても担当者さんの活動の全てを上司がフォローできるとは限りませんので、担当者さんだけの判断で指導がされることもあるでしょう。
    「証券会社の方に相談をしても、杓子定規な回答しかもらえない」ということを聞きますが、そうなってしまう構造的な事情を知っておくとよいと思います。相談をされた担当者さんとしては、一般的な(問題にならない)方向に指導するのがラクだからです。「一般論としては審査的に問題になりそうなものでも丁寧に検討すれば審査上もOKということもある」のがIPOの世界なのですが、丁寧な検討はノウハウが必要ですし社内の調整など面倒なことも多いのです。そのため、安全確実な(杓子定規な)指導をしてもそれを会社が受け入れてくれる状況であれば、あえて面倒な検討をすることもせず、原則論(安全策)を指導しておこうとなるわけです(実際には多くの場合、結論としては原則論の対応で正解となりますが)。

監査法人と証券会社という中心的なIPO関係者でも上記のような状況です。

それ以外の関係者(VCや税理士・弁護士・社労士等)からの指導・アドバイスについては更に注意が必要です。各々の得意分野についてはよいと思いますが、得意分野以外については大きな期待はしないほうがよいと思います。知識・経験が足りていない場合も問題ですが、IPO計画がその相手先の損得にも絡む場合、相手先側の損得勘定も考慮された(バイアスがかかった)指導・アドバイスである可能性も否定はできません。「プロの言う事だから」とそのまま受け入れればよいというわけではないということです。

  

3.IPOコンサル活用の是非について知る

IPO準備に何かしらの課題がある場合に話題になるのが、「IPOコンサル(コンサルティング会社、コンサルタント)」の活用です。私は、数年前のIPO氷河時代も含め、暫くの期間をIPOコンサル専業で生きてきた数少ない存在(だと思います)ですが、IPOコンサルについては、誤解も多いようなので少し触れておきたいと思います。

まず、IPOコンサルには、明確な定義もありません。IPOのための必須の関係者(監査法人・主幹事証券会社・証券代行機関(信託銀行)・ディスクロ印刷会社)とは別の立場で、IPO準備会社から報酬を受け取り、IPO準備に関連するサポート・指導を行う人たちのことをIPOコンサルというようです。

得意とする分野や支援レベル(支援内容・経験値等)も様々です

分野としては、資本政策策定や資金調達支援が得意なコンサル、事業計画の作成が得意なコンサル、決算・開示の部分が得意なコンサル、申請書類の作成が得意なコンサル、内部統制・JSOXまわりが得意なコンサル、人事・労務まわりが得意なコンサルなどなどです。

支援レベルとしても、若手担当者中心に個別テーマ(書類作成など)を下請的に作業するような形態(コンサルというより下請業者)から、高度なノウハウを持つ担当者がIPOプロジェクト全体を指導するような形態まで様々です

私も多くのIPO準備会社と接してきましたが、それぞれの会社さん毎に、外部からの支援が必要な領域・レベル感などはケースバイケースです。上手にIPOコンサルを活用できれば、(IPOコンサルを使わずに進めることとの比較において)プロジェクトの進捗が加速し、IPO実現に近づくとは思いますが、必ずしもそうはなっていないようです。

その会社さんにとって必要なのが(課題が)、どの領域に対するどのような外部支援なのかによって、どのようなIPOコンサルに依頼をすべきなのかは変わってきます。

アーリーステージベンチャーを対象に事業計画や資金調達支援をするのが主業務のコンサルに上場申請書類作成をお願いしてもダメだと思います。また、上場審査に特に強いコンサルにアーリーステージでの資金調達に関する支援を頼んでも難しいでしょう。

視点を変えると、(社内で適切な指示・依頼ができるので)作業だけを手伝ってほしいというケースと、IPO準備作業はなるべく自分たちで行うが(実践的なノウハウが足りないので)集中的にノウハウを注入してほしいというケースでは、その会社さんに適したIPOコンサルは同じではないと思います。

IPOコンサルの実力を知るのは難しいことです。IPO準備企業の方は、IPO準備において課題(不安)があるのでコンサルと接触します。コンサル側はプロですのでIPO準備企業よりは多くの事を知っていて当然です。「この人たちは頼りになる」と思うでしょうが、コンサルの中には支援できる「領域」・「レベル感」について「背伸び」をされているケースもあるようですのでご注意ください。せっかく、IPO前の大事な時期に安くもないコンサル報酬を払ったのに、相手には期待したほどのノウハウがなかった・・・と、後になって気づいても遅いですので。

IPOの中心的な関係者(まずは主幹事証券会社、その他として証券取引所、大手監査法人など)からの評判というのが、そのIPOコンサルの実力を探る最もよい手段だと思います(できれば複数からの評判を)。これら関係者は、IPOコンサルの存在を時には歓迎し、時には嫌煙します。コンサルが関与することでIPO準備が加速する(円滑に進む)のであれば歓迎されますが、変な過去事例を持ち込んで問題を誤魔化そうとするなどの悪質なコンサルが関与するのは困る(防ぎたい)と思っています。例えばですが、主幹事証券の担当者から「この間貴社から相談されたIPOコンサルの○○社について、社内でも聞いてみましたが、そんなIPOコンサル聞いたことがないなって話になりました」とか言われた時には、本当にそのコンサルに頼むのがベストなのかじっくりと検討した方がよいと思います。

主幹事証券会社は、自分たちこそが真のIPOコンサルであるとの自負をお持ちのため(実際にそうです。公開引受部門は会社から報酬を得てIPO全般の指導を行う立場ですので。)、IPOコンサル会社についての評価はとても辛口です。その方達から、「そのコンサルならいいと思いますよ」(いいと思いますよで十分)と言われている先があるなら、そこがいいと思います。

IPOコンサルを頼んだけど役に立たなかった」と聞くことがありますが、「頼み方」か「頼む相手」を間違えたんだと思います。。。。。

 

4.愚直に、誠実に、諦めずに

IPO準備に裏ワザや攻略法のようなものはありません。

上場した後にしっかり実務までを回していける経営体制・管理体制を、上場審査の開始前に構築しにいくことが絶対条件です。

このことに真正面から向き合っていない上場準備会社さんが氾濫している気がします。

投資家と適切な対応ができる経営陣(社長、情報開示担当役員など)、四半期開示・監査法人対応が確実にできる経理部門、上場会社としての株主対応(総会運営等)ができる総務部門などが必須となります。このあたりの検討・手当てをしていない状況で、「コンサルに頼んでなんとか上場できないか」という議論をするのはナンセンスです。

社内に上場した後でも安心して実務を任せることが出来る強い経営管理チームを作るとともに愚直に各種のテーマに取り組んでいき、社外の各種の関係者に対して誠実な対応(ウソはつかない、資料の提出期限など約束は守る)を行っていくだけです。

上場準備の過程では、必ずいくつかのピンチが訪れます。必死に乗り越えなければなりません。精神的にも肉体的にもハードな局面がありますが、諦めずにふんばりましょう。

愚直に・誠実に進めていれば、致命傷とならず、大抵のピンチは乗り越えられます。愚直に・誠実に、諦めずにが、私が考えるIPO準備の要諦です。