昨年10月23日に東証二部に上場した阿波製紙に関するニュース記事です。
同社より、以下のリリースが開示されています。
平成 25 年3月期中間配当に関するお知らせ (同社HPより、PDF)
内容は、
・12年9月末基準の中間配当を実施した(11月8日決議・公表、12月7日効力発生)が、会社法の手続きに不備があった
・株主に分配してしまった中間配当額 41百万円は、同社取締役の責任で全額を補てんした
・6月3日の会計監査人からの指摘で発覚し、6月11日に本件を開示
(補足 6月10日に本件には触れず、株主総会招集通知は発送済み)
というものです。
ニュースにもなっています。
新規上場の老舗製紙会社に思わぬ事態(東洋経済ONLINE)
かなり特殊な事例ですので、少し状況を解説しますと、
- 配当金の計算は、前期末(12年3月期末)を基準に分配可能額を計算する(会社法 461条 中間配当を行う場合も原則はこちら)。
- 同社は前期末(12年3月期末)に分配可能額が不足していた。その場合でも、今期の利益を加算して配当を行うことが可能。ただし、その場合には「臨時計算書類」の作成が必要だった(会社法 461条2項2号)。
- (作成しなかった)「臨時計算書類」には、会計監査人の監査証明が必要だった(会社法441条4項、会計監査人設置会社の場合)。
- 上記の手続きを踏まなかったので、「会社法違反」となった。
- なお、この「臨時計算書類」を用いた期中配当は、06年5月施行の会社法により実現。
ということです。
状況としては、残念なことにかなりの失態です。
総務部門の方だけでなく、各種のIPO関係者(主幹事証券、監査法人、信託銀行、印刷会社)の方もかなり気まずい状況になっているのではないかと思います(特に信託銀行?)。
一義的には、会社の総務部門のミスということですが、IPO前からこの中間配当は予定されていたこと(同社の上場時のプレスリリースでも中間配当を予定している旨記載されています)からしても、本件を(外部の)誰かが指摘できた可能性もゼロではなかったように思えます。
IPO直後に中間配当をするというケース自体が珍しいことで、さらに本件は、分配可能額として当期の利益を使う特殊ケースです。
ただ、会社法の理解不足ひとつで、ここまでの事件になってしまうということは、現在IPO準備中の会社さんは、ぜひ知っておかれるとよいと思います(総務系の体制を相応に高度化させないといけないということです)。
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【参考過去記事】