successIPO (IPO準備会社を応援するブログ)

IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

IPO活性化のための制度変更実施? (経済活性化のための緊急提言、日本再生加速プログラム)

今後、IPO活性化をより進めるため、制度変更が検討されていく「方向」のようです。

● 日本再生加速プログラム
11月30日に「日本再生加速プログラム」が閣議決定されました。
「日本再生加速プログラム」(PDF、内閣府HP)
ここでは、かなり多岐にわたる経済政策が列挙されていますが、じっくりよむと13ページと23ページに少しだけ触れられています。

( 13ページ)
・ 証券市場の活性化
 新興成長企業に係る規制緩和等を通じて資金調達の促進を図る米国におけ るJOBS 法(Jump-start Our Business Startups Act)の制定等を踏まえ、企業情報等の開示や民事責任及び課徴金制度等を見直す
(23ページ)
 証券市場の活性化を促進し、証券市場に対する信頼を高める観点から、金融商品取引法上の企業の合理的で公正な開示のあり方について、以下の事項を含めて検討を行い、結論を得る。
? 米国におけるJOBS法(Jump-start Our Business Startups Act)の制定等諸外国の状況や、我が国における証券市場の状況を踏まえた、企業内容等の開示の合理的な見直し
? 諸外国における状況や、我が国の状況等を踏まえた有価証券報告書等の虚偽記載に係る上場会社等の民事責任・課徴金制度のあり方

「日本再生加速プログラム」には、どこにもIPOのフレーズも出てきませんが、この閣議決定を報道した当日の日経新聞(電子版)では、以下のような記事でした。 
 新規株式公開(IPO)を活発にするための企業情報開示義務や課徴金制度などの見直しを2013年中に検討することも決めた

● 経済活性化のための緊急提言
こちらは。11月26日に規制・制度改革委員会 経済活性化ワーキンググループより発表されたものです。
経済活性化のための緊急提言(PDF、内閣府HP)
少し長いですが、IPO活性化に関連する部分を以下引用です。

(1)証券市場の活性化
 日本の株式市場における新規IPO社数は2000 年の204 社を頂点として減少傾向にあり、いわゆるJSOX法が本格的に導入された2009 年には19 社にまで落ち込むなど、引き続き低迷が続いている。こうした新規IPO社数の低迷については、SOX法をいち早く導入した米国においても同様であったが、オバマ政権は、2012 年4月、未公開企業による公開資本市場への参入障壁を低くすることにより新興成長企業(年間総収入10 億ドル未満の会社:Emerging Growth Company)の成長を支援し、雇用創出及び経済成長を促進することを内容とするJOBS法(Jump-start Our Business Startups Act)を施行し、現在新規IPO社数の低迷から脱しつつある
 日本においても、雇用創出・経済成長を促進する観点から、有価証券届出書において求められる監査済み財務諸表等の必要とされる記載年数の短縮化、事業年度ごとの内部統制監査報告書の提出義務の一定期間の免除等の金融商品取引法上の開示規制の合理化について検討することが必要である
 また、投資家保護の観点に配慮したうえで、虚偽記載等のある有価証券報告書等の提出者の流通市場における民事賠償責任については、内部統制のインセンティブを付与し証券市場に対する信頼を確保する観点から、無過失責任を立証責任の転換された過失責任とすること、また、有価証券報告書等の会社役員等の責任については、会社役員等の作為義務の内容には濃淡があることに鑑み、虚偽記載と相当因果関係にある損害ではなく、虚偽記載を防ぐための作為義務の懈怠と相当因果関係にある損害について責任を負う制度とすることについてそれぞれ検討することが必要である。
 同時に、課徴金賦課といった行政制裁は、社会における重みと重要性が増しつつあるため、課徴金に係る事件の調査の過程において、欧米等の行政制裁において通常認められている黙秘権・自己負罪拒否特権、弁護士顧客秘匿特権等を保障することを検討することが必要である。

12月の総選挙で、政権交代が行われる可能性がある状況ですので、上記の検討がどう進んでいくかは正直なところ不透明ですが、経済活性化のための政策は不可欠でしょうから本件についても「検討」は進められていくのではないかと思います。
私も個人的な考えとして、ベンチャー企業のIPOについては、内部統制報告制度(J-SOX)について制度変更か適用免除などの対応はしたほうがよいと思っています。
J-SOXの趣旨・思想を否定するつもりはありませんが、取引所サイドが、「ベンチャーは身の丈にあった管理体制を」との考えで、内部監査をアウトソーシングすることまで(状況によって)許容するという状況で、上場初年度からJ-SOXを適用する(「開示すべき重要な不備」がない状況も暗に求める)というのは、アンバランスだと思っています。

これから、このテーマがどうなっていくのか注目していたいと思います。

あと、以下も関連情報としてご参考までに紹介しておきます。
経済活性化に係る規制・制度改革に関する要望事項等一覧表(PDF、内閣府HP)
(注:これは、単に「要望事項」です)

 いわゆるJ-SOX法の施行により、新興成長企業においても事業年度ごとの内部統制監査報告書の提出が要求されている。
 IPOのコストを低減させる観点から、諸外国の制度も参照しつつ、新興成長企業について、事業年度ごとの内部統制監査報告書の提出義務をIPO後3年間は免除すべきではないか。

成長マネー活性化に関わる規制・制度改革要望のご説明(一般社団法人 日本ベンチャーキャピタル協会)(PDF、内閣府HP)
米国のJOBS法を紹介し、その上で「日本版JOBS法」が必要との提言です。