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IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

金融庁 IPOの審査を強化? 簡素化? (「新成長戦略」の金融分野における行動計画)

金融庁ウェブサイトに、
金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン(中間案)
が公表されています。
これは、今年の6月に政府が発表した「新成長戦略」を具体化するためのものです。

この件について、いくつかのニュースサイトで取りあげられていますが、タイトルも様々です(審査強化? 審査簡素化?)。
金融庁の新成長戦略案を発表 証券など3者で審査強化(47NEWS)
優良企業の上場審査簡素化 新興市場活性化で金融庁日本経済新聞

この中に、IPOの信頼性回復・活性化に関する取組が書かれていますのでご紹介します。
以下、同アクションプラン案より引用です。

1.上場前の企業の新興市場への上場促進
? グリーンシートの活用促進
 将来的には新興市場への上場の可能性があるものの、未だ上場準備段階には至っていない企業に対し、資金調達をサポートしつつ上場を促進する取組が重要である。
 現在、上場前の企業の資金調達の場としてグリーンシートが存在する。将来的には新興市場への上場を検討しているものの上場準備の負担が大きい創業期の企業等に対して、上場に向けた段階的な場を提供することが期待されるところであり、グリーンシートの活用促進のため検討を行うべきである。
 このような観点から、以下の取組を実施することにつきどう考えるか。
・例えばグリーンシート銘柄に指定されている間に良好な開示実績等を有する場合には、新興市場への上場の際に審査を簡略化する等のメリットを付与し、上場に向けた企業の負担を軽減する。
 
? 一定の質が確保された上場前の企業のリスト化
 上場前の企業は、特に上場企業とのアライアンスの構築等の面で様々な機会が相対的に限られている状況にあるが、このような企業に対して円滑な資金調達等をサポートするとともに新興市場への上場を促進する新たな方策を実施するべきである。
 このような観点から、以下の取組を実施することにつきどう考えるか。
・例えばベンチャーキャピタルが出資している企業や有価証券届出書を提出した実績のある企業のリストを作成、公表する。
2.上場審査等の信頼性回復・負担軽減等
? 有価証券報告書等の虚偽記載の防止に向けた密度の高い情報共有
 新興市場に対する投資者の信頼性を回復するためには、その入口である上場審査において有価証券報告書等の虚偽記載を防止し、安心して投資を行うことができる環境の整備が重要である。新規上場に当たっては、主幹事証券会社、監査人及び取引所がそれぞれの立場から上場申請企業の審査等を行っているが、三者間の連携の充実に向けた対応が図られるべきである。
 このような観点から、以下の取組を実施することにつきどう考えるか。
・上場申請企業と早い段階から接触のある主幹事証券会社と監査人の間で、早期から情報交換を行う枠組につき検討する。
・主幹事証券会社、監査人及び取引所の間で、有価証券報告書の虚偽記載等の事例について情報交換を行う枠組につき検討する。

? 引受審査等における審査の適正化・明確化等
 主幹事証券会社における引受審査に当たっては、上場申請企業に対し、理由が必ずしも明確でない指摘や全体から見て軽微と思われる指摘が行われる例があり、指摘事項が発生すると他の項目についての審査が中断するとの例もある。これらの点を踏まえ、企業の上場意欲を損なわないよう上場申請企業の予測可能性を高めるべきである。
 また、取引所の上場審査に当たっても同様の取組につき検討されるべきである。
 このような観点から、以下の取組を実施することにつきどう考えるか。
・上場を延期・断念すべき旨の打診が行われる際には、原則として文書交付等の手段により明確な理由の提示を行う。明確な理由提示が困難な場合がある反社会的勢力の関与等については、企業が確認すべき範囲や取引所等の審査の取扱につき整理・見直しを行う。
・例えば、売上げに占める割合がごくわずかである項目の予実乖離等、企業全体から見て軽微と考えられる事項については審査を簡略化する。
・ある項目で指摘事項が発生した場合でも他の項目に関する審査を続けること等により審査期間の短縮を実現する。
 また、会計監査について、以下の取組を実施することにつきどう考えるか。
日本公認会計士協会、日本証券業協会及び取引所の間で、例えば監査法人等との間でアドバイザリー契約を一定期間締結した実績がある等、一定水準の体制が整っていると認められる企業に対していわゆる遡及監査を行うことについての考え方を確認する。併せて、上場準備段階には至っていない企業に対して当該考え方の周知を行う。

感想としては、活性化という点では、これだけではパッとしない気がします。。。。
?について
 「まずはグリーンシート銘柄になって、その後に新興市場へ」というのが、企業の側にとってどこまで魅力的なのか?
?について
 「VC出資企業、届出書提出企業」を公表すると、その先に何があるのか?
?について
 個別企業についての情報交換などは守秘義務との関係でハードルが高いのでは?
?について
 ここに注目(期待)したいと思います。が、「売上に占める割合がごくわずか・・・等、企業全体から見て軽微と考えられる事項については簡素化する」とか「ある項目で指摘事項が発生した場合でも他の項目に関する審査を続ける」あたりは、今でも実務において行われているような気もします。


12月17日まで「広く」意見募集中ということですので、新興市場を活性化するための名案をお持ちの方がいらっしゃいましたらぜひ金融庁までどうぞ!
(私も意見を出すか考えたいと思います)



【参考過去記事】

新興市場等の信頼性回復・活性化?(金融庁)(10/10/12)

経団連は、「我が国の開示制度」にかなりのご不満?(10/07/25)