successIPO (IPO準備会社を応援するブログ)

IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

監査役協会 第3回 J-SOXアンケート

監査役協会のHPに、
「第3回 財務報告に係る内部統制報告制度に関するインターネット・アンケート」調査結果」の速報
がアップされています。
http://www.kansa.or.jp/PDF/el011_091002.pdf

全68ページと分量が多いですが、J-SOX適用初年度を振り返る資料としては、とても興味深い内容です(回答数:1,159社、回答率52.8%)。

内容は多岐にわたりますが、いくつかの項目だけご紹介します。


●問23-3(P45)
今年(09年4月以後開始年度)の監査人の監査報酬について

・減少 : 42.5%
・同額 : 31.7%
・増加 : 21.9%
(コメント) この数年増加を続けていた監査報酬も、J-SOXが一服し減少に転じたようです。


●問23-1(P43)
今年(09年4月以後開始年度)の、監査人の監査報酬はどのように決められましたか

1. 監査人が提示した当初の提示額から、「増額」した額で契約した : 0.6%
2. 監査人が提示した当初の提示額から、「減額」した額で契約した : 55.5%
3. 監査人が提示した当初の提示額どおりに契約した : 42.2%
4. その他 : 1.7%
(コメント)当初の提示額どおりに契約する会社は、半数以下ということです。



●問25(P54)
現在、社内に専門のJ-SOX対応組織(プロジェクト委員会など)を設けていますか

1. 設けている : 72.7%
2. 設けていない : 26.9%
3. その他 : 0.3%
(コメント) 約7割が2年目も専門部署を配置していることがわかります。が、08年12月の第2回アンケートでは、「設けている」が83.5%だったとのことですので、約10%の会社は、「初年度は専門部署を設置したものの、2年目には解散した」ということでしょうか。


●問33-1(P59)
有価証券報告書の作成の早期化や会社の決算対応・決算体制について、監査役(会)(監査委員会)として、直面又は感じている点や問題点はありますか。(複数回答可)

(以下、上位のみ)
1. 本制度の導入に伴い、決算対応における作業量が増加しており、実務担当者の負担が大きい :76.0%
9. 会社法上の開示資料と金融商品取引法上の開示資料について、その「作成」上、重複する部分が多く、非効率的である : 67.7%
10. 会社法上の開示資料と金融商品取引法上の開示資料について、その「監査」上、重複する部分が多く、非効率的である :48.7%
2. 決算発表の早期化の要請に対応できるだけの人員が確保できていない : 33.6%
6. 有価証券報告書の作成の早期化に対応できるだけの人員が確保できない : 30.5%
4. 決算発表の早期化の要請に対応するための人員確保やシステム整備に要する費用が負担となっている : 27.4%
3. 決算発表の早期化の要請に対応できるだけのシステムが整備されていない : 24.8%
8. 有価証券報告書の作成の早期化に対応するための人員確保やシステム整備に要する費用が負担となる : 23.6%
(コメント):総括すると、「実務負担の重さ(作業量が多い、人員確保・システム整備の必要性及びその費用が負担)」と、「会社法−金商法の重複・非効率」に問題意識が強いということでしょうか。


問35-1(P63)
本制度への対応を進める中で、外部の法人などのコンサルティング・サービス(以下、「コンサル」という)を利用しましたか。

1. 財務諸表監査を委託している監査法人にコンサルを委託した : 23.2%
2. 財務諸表監査を委託している監査法人以外の監査法人にコンサルを委託した : 7.9%
3. 監査法人ではない外部企業にコンサルを委託した : 29.3%
4. コンサルは委託していない : 38.1%
5. その他 : 1.6%
(コメント)コンサルを一切使わなかったのは4割未満であり、過半が何らかのコンサルを活用。


問35-2(P63)
問35-1で「コンサルを委託した」を選択した方のみ回答してください。コンサルの利用は、現在も継続していますか。

1. 現在も利用している : 27.3%
2. 現在は利用していない : 72.7%
(コメント)コンサルの活用は、初年度対応までで、2年目以後は企業のコンサルニーズは一気に減退しています。


問37(P65)
J-SOX適用初年度の対応を終え、貴社では、「費用」対「効果」を、どのように捉えていますか。

1. 「費用」を上回る「効果」があった : 6.1%
2. 費用対効果はほぼ同等である : 20.5%
3. 「費用」に見合う「効果」はなかった : 36.7%
4. わからない : 36.7%
(コメント)4.のわからないという回答も、実質面では3.に近いのではないかと推察されます。
「効果」はなかったとはっきり言う方が、3.を選んで、はっきり言わない方が4.を選んだのではないかと思います。
この問は、回答を見なくてもこのような結果は想像はつくものですが、やはり監査役の視点から(も)、J-SOX制度について、「費用」に見合う「効果」は見出せていないとのことです。