successIPO (IPO準備会社を応援するブログ)

IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

「IPO準備会社の中途採用」の難しさ(採用面接に関するアドバイス)

中途採用シリーズ(?)の第3回(最終回)です。

第1回(09年3月19日):「IPO準備会社の中途採用(経験者採用)」の難しさ
第2回(09年3月25日):「IPO準備会社の中途採用」の難しさ(書類選考に関するアドバイス)

今回は、IPO準備会社の採用面接にあたって、「私が行っていること、心がけていること」を書きたいと思います。

まずは、自己紹介をして頂きながら、『職務経歴書』に記載されているIPO準備の経験などについてについて具体的な説明を求めることにしています。
・前職の管理部門は、どういうメンバー編成だったのですか?
 ○○担当部長(例)というポジションはどういう役職なのですか?、直属上司は誰だったのですか?(社長ですか?取締役ですか?)
IPO準備プロジェクトは、どういうメンバー編成だったのですか?、その中で○○さんのポジションは?
 主幹事証券会社との対応責任者として、○○さんが対応していたのですか?
 主幹事証券会社は、どういう部署の方とやり取りされていましたか?
・Ⅰの部作成、Ⅱの部の作成経験があるとのことですが、?の部、?の部ともに膨大な分量があると思いますが、どの部分が自分で作成できるところですか?全部ですか?
 Ⅰの部、Ⅱの部を作成するに当たって大変だったのはどの部分でしたか?
・前職は上場計画が凍結となったとのことですが、どこまで準備が進んでいたのですか?
などなどをお聞きしています(実際はもっと踏み込んで聞きますが)。
これらのやり取りをすれば、キーワードを無理やり列挙した方なのか、本当に実務をやってきた方なのかはある程度は判断できます。

あと、ミスマッチを少しでも防ぐために私が意識しているのは、
●応募者が本当に希望している求人なのか(本人が本当にやりたいことは何なのか)
応募者の側からすると、1枚2枚の求人情報書面と、人材紹介会社からの口頭説明などかなり限られた情報だけで応募をしてきていることが多いと思います。
そのため、場合によっては応募人材の求人内容への理解がかなり不十分なまま採用決定まで進んでしまうことも起こりえる話です。
・実際のところ、どういう会社を転職先として探しているのか?(規模、業種、上場・非上場など)
・実際のところ、どういう職種・ポジションに就きたいと思っているのか?(CFO、IPO準備責任者、経理部長、経営企画室長など)
などもお聞きしています。
ミスマッチとならないようにするには、「この会社の求人が、その方が求めているような仕事なのか、やり甲斐を感じてもらえるような仕事なのか」を意識する必要があると思っているからです。
応募者が必ずしも本音で回答してくるとは限りませんが、経理部長の求人でも「経理で応募はしましたが、一番やりたいのは経営企画室の仕事なんです」とか、「本当は○○業(求人の会社とは異なる業種)に強い関心があるのだが、なかなかそういう求人もないので・・・・・・」のような話になることもあり、その話を聞きながら会社が探している人材かどうか(本人が探している仕事かどうか)を探ってみたりします。

●会社の問題・課題もなるべく説明する
どうしても会社は、優秀な人材に積極的に入社を希望してもらいたいこともあり、会社の良い部分の説明を熱心に行い、問題・課題についての説明には消極的になりがちです。
良かれと思ってそのような対応をしているのでしょうが、良い人材が入社してくれたとしても、「もっと良い会社だと思っていた」とか「こんな問題があるのは聞いてなかった」のようなことを言って辞めてしまっては、結果としては失敗(むしろ入社に至らない方がよかった)です。
問題・課題の全てを適確に説明することなどは不可能ですが、今回の求人に直接関係するような重要な問題・課題についてはある程度正直にお伝えし、『そのこと(問題・課題)について否定的にとらえず、やり甲斐だと感じてくれる人を探しているんですよ』と説明しています。
問題・課題を認識した上で、入社してくれる人材は、問題・課題の多さを言い訳にしないでしょうから、「ただ良い人材を探す」というだけでなく、「しっかりと定着してくれる良い人材を探す」ためには、会社の状況について悪い面も伝えるべきなのだろうと考えています。

●本人からの質問にはなるべく答える企業と応募人材の関係は、ヘッドハンティングでもない限りは、どうしても人材側が弱い立場です。
聞きたいことがあっても何でも質問できるわけではないというのが通常だと思います。
ただ、本来であれば、限界はあるもののある程度は「対等の精神」で対応すべきでしょうし、このやり取りを省いてしまったがために、入社決定となり、その後「こんな会社だと思わなかった」となるのはお互いにとっての大損失だと考えていますので、「どうしても答えられないこともあるかもしれないが、なるべくのことはお話しするので聞きたいことがあれば言ってください」としています。
この進め方は、本人への情報提供でもありますが、本人への理解が進むという副次的な効果もあります。
人によって聞かれることは様々ですが、どういうことが気になっているのか(社内の雰囲気、人材のレベル、経営陣のこと、上場準備の状況、経理体制の整備状況についてなどなど)や、その時のやり取りを通じて、本人の人柄や考え・信念のようなものが読み取れることがあります。
また、中には質問が全く無いという方もおられます。真剣に転職先を探している人材が、自由に(実際には自由ではないだろうとか思いますが)質問できる状況が与えられても、何もないということはないと思います。ですので、「質問無し」という方は、中途半端な気持ちで応募しているのか、何も考えていないのかだと判断し、私の評価としては減点です。


今回もいろいろ書きましたが、数回の面接を行っても、人材の良し悪しを判断するのは限界があります。
私が行うのは、IPO準備や経理実務などの能力・経験について『全然合わないだろうな』という人材については見送りましょうと会社に進言すること及び、その他の方についての感想・感触をコメントとして会社にお伝えすることに限定しています(それ以上のことはできません)。
前回の繰り返しになりますが、上場準備会社においては「その人材が経営陣などとウマが合いそうか」という要素がとても大切だと思いますので、私のコメントも部分的に参考にしてもらいながら、会社の判断・責任で一番良いと思う人材を選んでいただくしかありません。

これで、3回にわたる「中途採用コラム」は終了です。

人事・採用の専門家でもなく、経験上こうしているというだけですので、『私はこういう視点で採用面接をしています』のようなご意見などございましたら是非コメントをお願いいたします。