successIPO (IPO準備会社を応援するブログ)

IPOコンサルタントをしている公認会計士が、IPOを目指している(又はこれから目指す)企業さんやIPO業界関係者の方にとって参考になる情報を提供していきます。

上場準備のプロセス(過程)が重要・上場準備のプロセスに社長が積極的・主体的に取り組むこと

先日のエヌ・ピー・シーの隣社長の講演内容に絡めて、私の考えを書いてみたいと思います。

(第1回)●上場準備のプロセス(過程)が重要・上場準備のプロセスに社長が積極的・主体的に取り組むこと

●隣社長 講演より
・社長自身で、「?の部」、「?の部」を書いてみるべき。きっと書けないでしょう。
・人に任せてはダメ。自分で社内規程を作り、自分で内部統制の構築や文書化を行わないと意味が無い。
・「?の部」、「?の部」が全て書けたとき、社内整備、内部統制、組織運営が完遂されており、自分でも驚くほど利益が出ているはず。
・内部統制の構築は、コストがかかるではなく、利益が出る。
・「会社のことは自分が一番わかっている」という社長が多いが、実際には社内のことが見えなくなっている場合が多い。

・上場準備のプロセス(過程)が重要
上場準備は、その作業項目が多岐にわたり、しかもそれぞれの内容が一見難解です。
そのため、
【社長】 「上場準備について私はよく分からないので、君、よろしくやっておいて。」
とか、
【上場準備責任者(もしくは 社外のコンサル業者)】 「お任せ下さい。社長は何もしなくて結構です。私(弊社)がちゃんとやっておきますので。」
のような展開になりがちです。

本当にそうなのでしょうか。
上場準備のプロセスは、会社経営全般(主に経営管理面)にかかる改善活動に他なりません。
これを他人任せにしてしまっては、勿体ないと思いますし、良い成果も期待できないと思います。

上場企業になるために、自分の会社には何が弱いのか・足りないのか、なぜこの指摘に取り組まなければいけないのかという点については、しっかりと社長自らが理解された上で、役割分担を決めながら取り組んでいくべきなのではないかと思います。


・「?の部」、「?の部」を社長自身が書いてみる
上場申請書類 「?の部」、「?の部」についても、上場審査の中心となる極めて重要な書類ですのでそれなりに社長が関与したほうがよいと思っています。
ところが、上場申請書類は、『IPO準備室のメンバー(だけ)が作るもの』とか、『業者(書類作成代行をするIPOコンサル会社、会計事務所)が作るもの』という誤解をしている会社(経営者)が多いように見られます。

本当は、 「?の部」、「?の部」は経営者が作るものだと思います(隣社長が仰る「社長自身で、書いてみるべき」は大袈裟かもしれませんが)。
「?の部」は、上場承認時には開示され誰でも見れるようになりますし、その後の「有価証券報告書」のベースになります。未上場会社における決算資料(株主と銀行だけしか見ない)とは違い、「インターネット上で誰でもが見れるようになる我が社の情報」としてどのようなことを記載するかについて、最大の関心をもつのは経営者自身なのではないかと思います。
また、「?の部」は、開示はされませんが、上場審査におけるチェックポイントを纏め上げる資料ですので、これが十分に作れないということはそれだけで上場審査を受けるレベルにはないということになります。

ですので、上場準備の過程において、社長が 「?の部」と「?の部」には、どういうことが書かれるのかであったり、これを完成させるためには会社として、また、社長として何をしなければいけないのかを意識することはとても良いことだと思います。


このようなことを書くと、
「私(社長)は、忙しいのでそんなことに時間をかけたくない」、「そんなことをする時間があれば事業を伸ばすための活動をしたい」というお叱りを頂きそうです。
このご指摘はもっともですし、異論はありません。社長の最大の関心事(責務)は、事業を継続させること、安定させること、成長させることなのでしょうからこの考えも正論だとは思います。
ですから、上場準備のプロセスのうち、「何をいつまでにすべきなのか、その理由は?」のようなポイントだけを確実に押さえて、人(社内・外)に任せられる部分は任せ、社長がやるべきことはやるというふうに、効率的に進めていくのが上手い上場準備の進め方ではないかと考えています。


・最後に(おまけ)
「上場申請書類は他人任せにしてはダメ」ということを、IPOコンサルを仕事としている者が主張することに違和感をお感じになる方もおられるのではないかと思います(IPOコンサル=「上場申請書類を作る人」という世間の認識もあるようですので)。
これについては、
コンサル活動は、申請書類作成に限らず、「上場に向けて必要なこと全般」を対象としています。
「上場申請書類の作成支援」もコンサル業務として当然に行いますが、「会社さんが主体(主役)となって少しでも上手に(効率的に)、良いものを(効果的に)作れるように」というスタンスで対応しています(入力作業を代行することも行いますが、「全部作って下さい」というような丸投げ的な要請への対応はしていません)。


次回は、
●応援団とうまくコミュニケーションをとること
について書いてみたいと思います。