週間経営財務の08年5月26日号に、
「会計監査人の交代、半数以上が大手からその他へ」
という記事が載っています。
同誌が把握しているだけでも62社が今度の株主総会で監査法人を変更する予定とのことです。
詳細は、記事をご覧頂きたいところですが、
注目に値するのは、変更前後の監査法人の規模です。
62社の内訳は、
・32社: 大 手 → 大手以外
・15社:大手以外 → 大手以外
・ 9社: 大 手 → 大 手
・ 6社:大手以外 → 大 手
(大手:新日本、あずさ、トーマツ、あらた)
となっています。
約半数が大手から大手以外への変更ということになります。
記事では、開示されている交代理由はほとんどが「任期満了」とされており、判明している2社は「監査報酬の増加」が見込まれたため企業の意向で変更したという紹介がなされていますが、
この62社の監査人交代は、単なる企業側の意向での変更だけではないのではないかとは推察されます。
監査法人は、従来以上に、監査リスクが高い企業を敬遠する状況にあるものと思います。
来年以後継続したくない企業に対しては、あえて高額な報酬見積もりを提示して(暗に)交代を促すようなことも行われているようです。
「報酬はいくらアップして貰っても継続できない」という企業もあるのかもしれません。
上場準備会社さんも厳しい環境におかれています。
「来期からは報酬を大幅に増額してほしい」や「来期は監査契約を更新できない」のような申し入れを受けている上場準備会社さんが多数あるようです。
上場準備会社さんの場合、監査人の交代はそう簡単にはできません(上場企業もですが)。
直前期や申請期に交代となった場合、それが理由に上場延期となってしまう可能性まであります。
上場準備中の会社さんに申し上げられることとしては、
●これから上場企業になるにあたっては、それなりの金額の監査報酬を負担することが不可避である。
(監査報酬や管理部門の体制強化のための人員増を負担できない・負担したくない会社は上場方針を再考すべき)
●監査法人対応が上手に出来るような管理部門体制の構築を、上場のための重点課題として取り組む必要がある。
(監査法人への対応が上手に出来ないことに起因して、会計士の作業工数が増加してしまい、それが報酬増額の原因になっている場合がある)
●上記2点を踏まえた上で(やるべきことはやった上で)、自信を持って、会計処理や監査日程・報酬などについて監査法人と対応・議論する。
のような点でしょうか。
悪気はまったくないものの、「会計士から指摘事項を専門用語を多用しながら説明されたので理解できなかったが、聞き返すことが出来なかった(聞けない雰囲気だった)」とか、「あの一言がそこまで重要なことだとはわからなかった」等のボタンの掛け違いのようなところから監査法人との関係が悪化していってしまうケースもあるようです。せっかくの上場準備をムダにしないよう、このような状況にはならないようにして頂きたいと思います。
あと、監査法人の方にも、上場準備会社さんは管理体制が整備途上の状況の場合、十分な経理知識がない場合も多いことから、そのような状況をある程度は理解した上で、上手に会社さんとコミュニケーションを取っていただける様お願いしたいところです。
以下の過去記事もご参照下さい。
新興監査法人?(2008年1月22日)
各種関係者(監査法人) (2008年5月1日)